【中小製造業の悩み#1】ベンダーロックイン

目次

はじめに:DX・OTにまつわる中小製造業の悩み

今回から中小製造業における悩みの中で特にDXやOTに関係するものを取り上げ、現状とその対策について解説してみたいと考えています。

今回はシステムのリプレイス(システムを新しく入れ替えること)、または設備更新の悩みについて掘り下げてみます。私がこれまで伺った中小製造業の企業様においては、基幹システムや工場設備の制御などは特定のパートナー(ベンダーやメーカー)から供されたものであるケースが比較的多い印象でした。

リソースが限られている中小企業においては大企業のようなIT部門や設備保全部門を擁することが難しく、これらをベンダーやメーカーのサービスにより補うことは合理的です。しかしながら、OS等が古くなったレガシーシステム(古いシステムのこと)や設備老朽化により置き換えが困難となるリスクや、自働化やDXを検討しようにも拡張性や柔軟性の不足により、施策が進められないというリスクも同時に抱えることとなります。

ベンダーロックインとは何か

このような状態はベンダーロックインと呼ばれ(コーポレートロックインやテクノロジーロックインとも呼ばれる)、特定のベンダーやメーカーの製品やサービスに依存し、企業の事業内容や業務フローに対する制約やムダなコストの要因となります。

例えば、受注管理や生産管理システムにおいて登録項目数や種類の制限により、手書きメモが発生し、それらをシステム外のエクセルに人力入力して別途管理していることがあります。また、生産設備において柔軟なアラート条件設定ができないことで正常な生産状態でも頻繁にアラートが発報してしまい、結果、現場ではアラートを無視する、または無効化するということが起こってしまいます。

ベンダーロックインが発生する3つの要因

① 要求仕様をユーザー企業が定義していない

ベンダーロックインが発生する要因として、大きく分けて3つ挙げられます。1つはシステムや設備への要求仕様をユーザーである企業が定めていないことです。

ユーザー企業側で自社のシステムや設備の要件を定めておらず、ベンダー側に丸投げしている場合、他ベンダーとの比較ができず、そもそもリプレイスの検討すら不可能となります。さらにベンダーとの付き合いが長くなるほど追加仕様や独自仕様が蓄積されることとなり、全体の機能要件の把握が困難となります。

② 業務の整理・体系化ができていない

2つ目はユーザー企業側で全体業務の体系化や整理、把握をしていないことです。ユーザー企業側で自社の業務間のつながりや全体の業務フローを把握できていない場合、ベンダー側の想定でシステムや設備を提案することとなり、他ベンダーの参入を阻むことになります。

ここにベンダーやメーカーの独自技術が加わることでより他ベンダーへの移行は困難となります。

③ リソース不足

3つ目は上2つの要因の間接要因となりますが、リソースの不足です。システムや設備の自社管理、会社全体の業務について把握、検討するだけの人員や予算が不足しているため、身動きが取れない状態となっています。

多くの企業が課題として認識している現状

このような現状に対して、課題感を感じている企業は少なくなく、例えば東北圏の産業分野におけるデジタル技術活⽤に関する実態調査では約6割の中堅・中小企業がベンダーロックインを課題と認識している結果が示されています。またIPAのDX白書2023では約4割の企業が、レガシーシステムが残存していると回答しています。

ただし、課題に感じていながらもリソース不足により具体的な対策に進むことが困難であるのも実情です。

特定のベンダーからすべてのシステムを供されていること自体が悪いというわけではなく、外部リソースの有効活用などメリットもありますが、例えばそのベンダーが倒産などで事業継続困難となった場合、システムの保守やメンテナンス、最悪の場合システムの利用停止といったリスクが生じてしまいます。

ベンダーロックインを脱却する3つの考え方

① 機能要件を明確化する

それではどのようにすればベンダーロックインから脱却することができるのでしょうか。こちらも大きく分けて3つの考え方があります。

1つはベンダーから機能要件の一覧を取得する、または協力して整理するということです。まずはユーザー企業側でシステムや設備にどのような機能があり、どの機能がどの業務と紐づいているか、どのような理由で必要かといった全体像を把握することが必要です。これによりシステムの切り分け、他ベンダーとの連携について考えることが可能となります。

② 業務を標準化・汎化する

2つ目は業務を標準化、汎化するということです。これは製品の規格で考えるとわかりやすいですが、独自規格を持つ製品は特定の環境や仕組みを必要とするため、互換性がなくメーカーとユーザー双方にとってより多くのコストがかかります。

業務においても、競合他社が複数存在する業界であれば、一定程度の業務の標準化、汎化は可能であり、ISO等で規格や標準も定まっていることも多いと考えられます。

業務の標準化、汎化によりシステム上の独自仕様や追加仕様が不要となり、他ベンダーへ置き換えやすくなります。自社で0から業務の棚卸をすることはリソース上難しいと思われますので、まずは同業他社や類似業界、製造業で共通化・標準化されているものを参考とすることをお勧めします。

③ 第三者に相談する

3つ目は第三者への相談です。人材リソースはないが予算の確保が可能な場合は、外部人材やサービスの活用、特に中小企業の場合は国や県が提供している中小企業向けの専門家サービス等があるため、まずは相談してみるのが良いかと思います。

その場合は有る程度相談内容、ベンダーロックインについての悩みであれば、機能要件と業務についてできる範囲で整理した上で相談すると、マッチングやアウトソーシング内容について齟齬が生じ難いと思われます。

まずは無料相談から始めませんか?

工場のセキュリティやDXのことでお悩みなら、まずは60分の無料オンライン相談をご活用ください。
現状の整理から、導入の方向性まで丁寧にご案内いたします。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次