【OTセキュリティ #11】一般ネットワークと産業用ネットワークの違い

目次

ネットワークという言葉が指す範囲

通常使用しているネットワークという言葉ですが、これにはインターネットと呼ばれる世界中の情報端末が相互に接続された情報通信網と、ローカルエリアネットワーク(いわゆるLAN)と呼ばれるオフィス内や家庭内といった比較的狭い範囲のネットワーク、ワイドエリアネットワーク(WAN)と呼ばれる企業や組織の異なる拠点間を接続するネットワークというように複数の意味が含まれています。また、さらに私有のLAN、WANはプライベートネットワークとも呼ばれます。普段IT分野でネットワークというとプライベートネットワークのことを意図していることが多いかと思います。

一般ネットワークで使われる主な通信規格

一般ネットワークにおける主な通信規格は大きく分けて二つ有り、一方は主に有線LANで使用されるIEEE 802.3(Xerox社が開発した通信規格イーサーネットを標準化団体IEEEが標準化したもの)、もう一方は無線LAN(Wi-Fi)で使用されるIEEE 802.11シリーズです。

その他の通信規格としてはネットワーク制御や管理機能に関するIEE802.1系列、Bluetoothなどの近距離無線通信のIEEE802.15系列、そして携帯通信や光通信などのITU/3GPP系列があります。

産業分野で使われるネットワーク:産業用ネットワーク

これに対し産業分野で使用されているネットワークは産業用ネットワークと呼ばれています。主に工場やプラントの機器間の通信に用いられており、オフィスなどで使用されるネットワークに比べリアルタイム性、堅牢性、信頼性が高いことが特徴です。

産業用ネットワークの分類(産業用イーサーネットとフィールドバス)

産業用ネットワークは大別して産業用イーサーネットとフィールドバスの2つがあり、前者はオフィスの有線LANと同じIEEE802.3準拠の通信方式を、後者はシリアル通信であるRS-232または485の通信方式を用いています。

シリアル通信は情報を1ビットずつ順番に送る通信方式であるため、イーサーネットに比べ低速ですが、その代わり通信に用いる線が少なくシンプルであるため低コストで配線可能です。

産業用イーサーネットの代表的なプロトコルとしてはPROFINET、EtherNet/IP、EtherCat、POWERLINK、Modbus-TCP等があり、フィールドバスの代表的なプロトコルとしてはPROFIBUS、Modbus RTU、CC-Link等があります。表1に各プロトコルの特徴を示します。

昔はフィールドバスが主流でしたが、近年では産業用イーサーネットが主流になってきています。ただしフィールドバスはセンサとの通信においては、耐ノイズ性や0-20mAや0-5Vなどのアナログ通信に対して比較的長距離の通信が可能である点から引き続き使用されています。

産業用ネットワークの無線化の進展

またIT分野同様に無線化が進んできており、工場やプラントの過酷な環境に適した対候性、耐ノイズ性、耐振動・衝撃性の高い堅牢な産業用無線LAN装置や無線センサ用の通信機器、産業用イーサーネットを無線に変換するコンバーター、産業用Bluetoothなどが登場しています。

キーエンスの産業用ワイヤレスシステムではIEEE802.11系列の6GHz帯が用いられていますがこれは産業用イーサーネットの無線化が狙いとなっています。一方Phoenix Contactの無線センサ通信用のワイヤレスゲートウェイ、ワイヤレスI/Oモジュール、アンテナではWirelessHART、ISA100.11aといった2.4GHz帯のIEEE 802.15.4規格をベースにしたメッシュネットワークを採用した通信規格が用いられておりフィールドバスの無線化を想定しています。

ただし、工場によっては金属や液体を扱っているため、電波が遮蔽され無線が上手く機能しない場合があるので、高所に置くなどの設置場所の工夫や中継器を活用するなど個別の対応が必要です。

産業用ネットワークにおけるセキュリティ対策

産業用ネットワークでも一般ネットワーク同様に十分なセキュリティ対策が求められます。

製造ライン単位でセグメントを分ける、不必要なバイパス接続はしない、セキュリティ対策をしていない機器は繋げない、許可されていないリムーバルメディアや情報端末は接続しないといったIT同様の基本的な対策は当然のこと、古いOSへの仮想セキュリティパッチや定期的な検疫と診断、不要なコマンドやプロトコルの制限、一方通行の通信制限、機器単位の接続制限(macアドレスのホワイトリスト)といったOTに適したセキュリティ対策が必要となります。

ネットワークプロトコル通信方式特徴
産業用EthernetPROFINETIEEE802.3準拠+RTIEC標準、互換性が高い、PLC間通信向け
EtherNet/IPIEEE802.3準拠+CIP異なるネットワーク間の通信に強い、 ロボット・I/O制御向け
EtherCatIEEE802.3準拠+独自リアルタイム機能が高い、ロボットアーム向け
POWERLINKIEEE802.3準拠+時分割同期型でリアルタイム機能が高い、同期制御向け
Modbus-TCPTCP/IPベースシンプルかつオープン、センサ・HMIなど軽量な通信向け
フィールドバスPROFIBUSRS-485安定、I/O制御・プロセス制御・装置連携
Modbus RTURS-232/485シンプル・安価、マイコン簡易制御・センサ向け
CC-LinkRS-485応答性高、工作機器、装置間連携、日本・アジア中心

表1.産業用ネットワークの代表的なプロトコル
 

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