【製造業のエネルギーマネジメント#4】製造業におけるハード面の省エネ事例

目次

基本的な省エネ対策:照明と空調の見直し

製造業における省エネの事例を挙げると、まず基本的なものとしては、蛍光灯をLEDに変える、温度管理にヒートポンプ導入または効率の良い空調に変える、というものがあります。

蛍光灯とLEDの違いは、明るさ当たりの消費電力、つまり発光効率です。発光効率は直管型において蛍光灯が110lm/W前後、LEDが130~200lm/Wと効率は1.2~1.8倍となっています。一方、寿命は2倍、コストは2~3倍となっているため、値差を仮に1000円/本として、1本あたりの消費電力32Wの蛍光灯に対し26Wで同等の明るさのLEDに交換、5W×20円/kWh×10hrといった条件の場合、投資回収年は3年程度となります。

空調に関しては、投入したエネルギーに対して取り出せる仕事の比率、つまり冷暖房効率であるCOPは資源エネルギー庁の報告資料によれば年率2.6%程度上昇しており、更新が10年の場合、同じ条件に対して26%程度の消費電力削減が見込まれます。ただし機器と工事を合わせると投資コストとしては大きくなるため(業務用エアコン冷却能力20kW、8馬力の場合100~200万)、老朽更新に合わせて最新機種にアップデートすることが一般的です。

工場特有の省エネ手法:インバーター制御と熱対策

工場特有の手法としては、ポンプのインバーター制御、排熱利用や熱ロス低減(断熱、遮熱)、製造プロセスの転換や効率化、瞬停や非安定稼働の低減による設備稼働ロスや製品ロスの低減、などが挙げられます。

インバーターは通常50または60Hzである交流周波数を調整することでモーターの回転数、すなわち出力を調整する機能を持ちます。これにより定格の出力を必要な出力まで低減することで消費電力の削減が可能となります。

例えば、消費電力2.2kWのポンプを24時間稼働させている場合、バルブ等で強制的に流量を絞った場合とインバーターによって流量を抑制した場合との差が消費電力の削減分となるのでこの差を25%とすると、0.55kW×20円/kWh×24hrより投資回収年が求められます。2.2kWポンプのインバーター導入の費用を設計や設置工事費を含め、仮に20万円程度とすると投資回収は2年程度となります。このインバーターは空調などには標準的に搭載されており、目標温度までは大きな出力で稼働し、目標温度に達した後は稼働開始温度まで小さな出力で稼働しています。

断熱と遮熱の効果と注意点

排熱利用としては、工場排熱の温水プール利用、蒸気タービンによる発電回収、熱回収素材による蓄熱があり、熱ロス低減としては建物や熱プロセス装置、そして熱流体を扱う配管の断熱化、または建物の遮熱があります。

断熱は、熱の伝わりにくい素材で覆うことで熱の移動を抑制し、外気温など外乱影響を低減することが可能です。

遮熱は、放射熱、特に直射日光による屋外の建物や機器に対する受熱を抑制し、空調の消費電力削減効果があります。室外機は本体温度や周辺温度が冷却効率に影響するため、夏場の室外機の遮熱も省エネに有効です。ただし、冬場の遮熱は建物や室外機の温度が下がりすぎて逆に暖房費の増加や効率低下となるため、建物の場合、屋内に熱源が無く冬場に暖房運転が必要となるケースでは遮熱より断熱が効果的です。また室外機については、取り外しができる遮熱器具の方が良いと考えられます。

断熱による具体的な省エネ効果を試算すると、床面積数百㎡の建物の場合、外部から建屋に流入する熱量である熱負荷は室温20℃で維持している場合、夏場で数十kWとなるので、この熱負荷を平均50kWとして断熱で半分の25kWに削減できた場合、空調の実COPが3.0である条件では25kW÷3.0×20円/kWh×24hr×30日で1カ月12万円のコスト削減となります。

断熱の重要性と設計の工夫

製造業においては原料管理や製造条件管理のため、室温を常に一定に維持するケースも少なくはなく、例えば食品工場などが該当します。このようなケースでは、エネルギー使用量に対する断熱の影響が大きいため、要件に沿った上でイニシャルコストとランニングコストを最適化した建築、空調設備の設計が重要となります。

次回は「製造業におけるエネルギーマネジメントシステムとその効果」をご紹介します。

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