【中小製造業DX#4】本当のボトルネックを「見える化」するには
〜複雑化した現場をどう捉え直すか〜
中小製造業のDX・業務改善を支援するコンサルティングエンジニアとして、現場の実体験から、課題解決のヒントをお届けします。
はじめに:DXの準備が整ったその先へ
これまでのコラムでは、DXを進めるための土台として以下の3つのポイントをお伝えしてきました。
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業務で用いられている用語の整理・統一
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会社全体の業務フローの見直し・整理
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業務処理や生産能力の定量化
これらの準備が整えば、いよいよ中小製造業におけるDXの“本格的な推進フェーズ”に入ることができます。
そしてこの段階で、現場からよく挙がるのが次のような声です。
「どうして生産能力が上がらないのか分からない」
「課題の正体すら、はっきりしない」
こうした課題に対して、非常に有効なアプローチがリアルタイムでの“ボトルネックの見える化”です。
ボトルネックとは?その定義と現代の難しさ
「ボトルネック」とは、製造工程の中で最も処理能力が低い部分のことを指します。
この工程が全体の生産速度を左右し、そこが詰まってしまうと他の工程の能力が活かしきれず、全体のパフォーマンスが低下してしまうのです。
かつての大量生産の時代では、工程やロットが一定だったため、ボトルネックの特定は比較的シンプルでした。
しかし現代は違います。
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小ロット多品種型の生産が主流
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ロットごと、日ごとの組み合わせでボトルネックが変動する
つまり、常に動的に変わるボトルネックをどう捉えるかが、現代の中小製造業にとって大きな課題なのです。
製造工程以外が“見えないボトルネック”になることも
さらに厄介なのが、「製造以外の業務」が実はボトルネックになっているケースです。
製造部門はすでに自動化やデータ集計が進んでいても、以下のような周辺業務が連携できていないことがあります。
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設計業務や事務処理(手配・出荷)
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バックオフィスでの紙やエクセルによる管理
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社内外との情報共有の遅れや断絶
こうした工程の遅れが結果として全体の流れを滞らせているにも関わらず、気づかれにくいというのが現状です。
真の「見える化」を実現する仕組みとは?
では、どうすればこれらの“隠れたボトルネック”までを含めて、全体を見える化できるのでしょうか?
鍵となるのは、受注から納品までのすべての工程・業務を、ロット単位で把握できる仕組みをつくることです。
そのためには、次のような要素が必要になります。
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営業・設計・調達・製造・出荷といった部門横断的な工程の連携
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各工程の生産速度と処理能力をロット別に定量化
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情報の流れを一元管理できる共通の基盤
データを一つの“土台”に乗せるということ
こうした見える化を実現するためには、基幹システム(ERP)と生産管理システムを連携させる必要があります。
方法には大きく2つの選択肢
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パッケージ型ERPの導入(例:SAPなど)
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基幹から現場までを網羅可能
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ただし、投資額が数千万円〜数億円と高額になることも
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要件定義に基づいた、部分連携型の構築
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既存システムの一部を活かし、必要な機能を組み合わせて構築
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投資額を抑えつつ、目的に合った見える化が可能
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たとえば、SAPにも中小企業向けのサブスクリプションサービスがあり、
基幹と生産をうまくつなぐことで、十分に対応できるケースもあります。
本当に見たい「ボトルネック」を捉えるには
最終的に目指すのは、以下のような状態です。
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ロット単位・日単位での生産性指標を整理
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各工程の処理能力を可視化し、フロー順で比較できる状態
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本当の意味で“どこがネックか”を、リアルタイムで把握できること
このように、全体がつながり、現場で即時に判断できる仕組みがあることで、初めてボトルネックの解消に向けたアクションが現実のものになります。
まとめ:見える化は“つなぐこと”から生まれる
ボトルネックの見える化とは、単なる「数値の表示」ではありません。
受注から納品までの全体をつなぎ、流れを“共通の言語”で捉えることです。
そのために必要なのは、
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データを一つの基盤に集める仕組み
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自社に合った方法で構築する知恵
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主体的に“見ようとする姿勢”
DXとは、決して大掛かりな仕組みを入れることではなく、自社の課題に向き合い、それに合った方法で改善することだと、私は考えています。
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補足・協力
本記事は、株式会社コガク様のご協力のもと、Podcastセミナー第4回の原稿をもとに再編集したものです。
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