~“経営と現場”をつなぐコンサルティングエンジニアの視点から~
ツール導入で終わらない、本質的なDX推進のヒントが得られます。
【中小製造業DX】なぜDXは進まないのか?
〜現場のリアルから見える根本原因〜
中小製造業のDX・業務改善を支援するコンサルティングエンジニアとして、現場の実体験をもとに、企業の課題解決に役立つ情報をお届けしています。
DXとはそもそも何か?
「DX(デジタルトランスフォーメーション)」という言葉は、今や多くの場面で耳にします。
AIやロボットによる自動化といったイメージを持たれている方も多いのではないでしょうか。
この言葉の初出は、2004年にスウェーデンの大学教授が論文で用いたもので、元々は「デジタル技術の進化が人間の生活を変える」という広い意味を持っていました。
一方、日本の経済産業省はDXを次のように定義しています:
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、製品やサービス、ビジネスモデル、組織・プロセス・文化を変革し、競争優位性を確立すること」
こちらは企業とビジネスにフォーカスした定義です。
ただ、私はこの定義に少し回りくどさを感じます。
本質的には、企業が抱える悩みをどう解決するか、ということ。
その解決のためにデジタル技術を活用する。技術は手段であって目的ではありません。
中小製造業におけるDXの再定義
私なりに、中小製造業向けにDXを再定義すると、こうなります:
「最新デジタル技術を用いて、これまで解決できなかった悩みを解決し、会社を発展させること」
つまり、「目的は会社の成長」「手段はデジタル技術」。
そこを見誤ると、ツール導入が目的化してしまい、本質的な変革が進まなくなってしまいます。
DXが進まない5つのよくある要因
2021年時点で、DXに成功している日本企業は1割未満という調査結果もあります。
よく挙げられる原因は以下のとおりです:
- 経営者の理解不足
- アナログ前提の業務が多い
- システムやツール導入で満足してしまう
- DX人材や予算の不足
- 現場からの抵抗感
これらはたしかに存在します。ですが、私の経験上、現場にはさらに根本的な「進まない理由」があると感じています。
本当の原因は「業務を止められない」から
中小製造業におけるDXの大きな壁は、
「今の業務を止められない」ことです。
多くのDXツールやサービスは、AIを中心とした製品ありきで提供されています。
しかし、実際にその効果をどう引き出すかは「ユーザーに委ねられている」ケースが非常に多い。
展示会や事例集を見ても、実践しているのは「自力で工夫して成功させた」企業が中心です。
人材・時間・予算が限られている中小製造業にとっては、このような状況でDXを進めるのは非常に難しい。
さらに製造業は、「止めたら売上がゼロになる」業態です。だからこそ、根本的な改革には踏み切れない現実があります。
時代と仕組みのズレが生む問題
たとえば、かつての大量生産から、現在は小ロット・多品種の時代へと移行しました。
それに対応できるよう、設備や業務は少しずつ改善されてきた一方で、
基幹システムやルールは古いままというケースが多く見られます。
現場単位では変わっているのに、会社の“骨組み”はそのまま。
このズレが、現場の悩みを生み出し、やがて限界を迎えてしまいます。
必要なのは「仕組みの再設計」
悩みを本質的に解決するためには、
基幹システム・ルール・仕組みをアップデートする決断が必要です。
これは単なる「ツール導入」や「DX人材育成」では解決しません。
会社として、「これからどうありたいか」という未来像を描き、
そのために必要なDXを取捨選択し、全社で意思決定することが重要です。
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本記事は、株式会社コガク様のご協力のもと、Podcastセミナー原稿をもとに再編集したものです。
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