【中小製造業DX#5】ボトルネックを“解消”するために必要な考え方
〜見える化の次に踏み出す一歩とは〜
中小製造業のDX・業務改善を支援するコンサルティングエンジニアとして、現場での実体験をもとに、課題解決のヒントをお届けします。
はじめに:ボトルネックが「見えるようになったら」、次は?
これまでのコラムでは、DXを進める上での基本的な考え方や、ボトルネックを見える化するための仕組みについてお話してきました。
特に前回は、小ロット多品種型の生産においてはロットやその組み合わせによってボトルネックが日々変動するため、それを把握するには、受注から納品までに関わる全ての業務について、生産速度と生産能力をロット別に把握できる仕組みが必要であるということをお伝えしました。
今回はその続きとして、「見える化」されたボトルネックを実際にどう“解消”していくかという点について、具体的にお話しします。
DXの本当の目的は「見える化」ではなく「行動」
DXという言葉を聞くと、まずは「データの可視化」がイメージされるかもしれません。
確かに“見える化”は重要ですが、それ自体が目的ではありません。
可視化の役割は、問題点を定量的に評価し、明確にすることです。
つまり、「見えるようになった」ことで終わりではなく、そこから行動に移すことが本質的なDXの目的です。
ボトルネックの“原因”を探る
リアルタイムにボトルネックを可視化できれば、その時点でどの工程や業務がネックになっているのかが分かります。
次に必要なのは、なぜそこがネックになっているのかを把握することです。
ボトルネックの原因は、大きく分けて以下の3つに分類されます。
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設備要因(老朽化、トラブル、性能不足など)
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人的要因(担当者のスキル差、経験不足、作業ミスなど)
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外部要因(部品納入遅れ、外注先トラブルなど)
こうした原因を特定する際には、システム上で紐づいている受注~出荷の情報が役に立ちます。
たとえば、
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顧客や製品種別
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生産条件(ロットサイズや納期)
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設備の設定条件
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担当作業者の履歴
これらのデータをもとに、何が共通しているか、どのような条件の時にボトルネックが生まれやすいかを分析していきます。
ボトルネックを解消する“改善サイクル”を回す
ひとつのボトルネックが解消されれば、次のボトルネックが姿を現します。
それをまた分析し、改善する——これを繰り返すことで、全体の生産性を段階的に底上げしていくことができます。
このプロセスは、いわゆるPDCAサイクルに近いものです。
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ボトルネックの発見(Plan)
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原因分析と対策の実施(Do)
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効果の検証(Check)
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次の改善へつなげる(Act)
このように、継続的な改善サイクルをDXで支えることが、現代の製造業において重要な取り組みになってきています。
AIによる“予測型”改善へ
さらに一歩進んだ取り組みとして、AIを活用したボトルネックの予測があります。
AIが過去のPDCAサイクルのデータを蓄積・学習することで、以下のような“先読み”が可能になります。
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特定の受注や生産条件が将来的にどの工程に負荷をかけそうかを予測
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見積り・受注の時点で先のボトルネックを見極める
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ロットの優先順位変更や、担当者のシフト調整を事前に検討
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外注化やリードタイム緩和といった対応を前倒しで検討
このように、DXとAIを組み合わせることで、トラブルを未然に防ぎ、リソースの使い方にも余裕が生まれるのです。
生産性向上がもたらす「未来の時間」
第2回でも触れた通り、生産性が向上すれば、売上の増加やマンパワーの余力が生まれます。
そしてその余力を、「本来向き合うべき課題」へ振り向けられることが理想です。
たとえば、
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慢性的な人手不足への対応
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トラブル未然防止の仕組みづくり
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新たな販路の開拓
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新商品開発や新規事業の推進
つまり、DXは「省力化」のための手段ではなく、企業の未来を創るための手段であるべきなのです。
まとめ:ボトルネック解消の先にある、継続的な成長へ
5回にわたりお届けしてきた「中小製造業向け DXシリーズ」、いかがでしたでしょうか。
「ボトルネックを見える化し、それをどう解消するか」というテーマは、あくまでDXの一例ですが、
ここでご紹介したような考え方や手法が、貴社にとってもDXを始めるヒントになれば嬉しく思います。
変化の激しい今だからこそ、自社の現場と向き合い、未来に向けて着実に改善を積み重ねていく——
その一歩が、次の成長につながると信じています。
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■補足・協力
本記事は、株式会社コガク様のご協力のもと、Podcastセミナー第5回の原稿をもとに再編集したものです。
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